ja:med:abx
目次
抗生物質
βラクタム系
ペニシリン系
天然ペニシリン
- 例:ペニシリンG<PCG>
- 有効:連鎖球菌(感染性心内膜炎、髄膜炎、肺炎、喉頭炎、扁桃炎、中耳炎、猩紅熱、丹毒)、破傷風、炭疽、ジフテリア、放線菌、梅毒、レプトスピラ
- 無効:グラム陰性菌、ブドウ球菌
- 放線菌、梅毒、レプトスピラの治療で、投与後6~48時間ヤーリッシ・ヘルクスハイマー反応に注意
ペニシリンナーゼ抵抗性ペニシリン
- 例:メチシリン<DMPPC>、オキサシリン<MPIPC>、ナフシリン<NFPC>
- 有効:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌<MSSA>
- 無効:グラム陰性菌、腸球菌
- 連鎖球菌に天然ペニシリンのほうが優れるから、ペニシリンナーゼ抵抗性ペニシリンはMSSAだけに使う、とくにMSSAによる血流感染と感染性心内膜炎はナフシリンを選ぶ
広域ペニシリン
- 例:アンピシリン<ABPC>、アモキシシリン<AMPC>
- 有効
- グラム陽性球菌:連鎖球菌、MSSA、エンテロコッカス・フェカリス、ピロリ菌(腸球菌に天然ペニシリンより優れる、MSSAの場合はβラクタマーゼ阻害剤と併用、AMPCはエンテロコッカス・フェカリスの第一治療薬)
- グラム陰性桿菌(βラクタマーゼ阻害剤と併用):ヘモフィルス、モラクセラによる副鼻腔炎、中耳炎、肺炎,プロテウス・ミラビリスによる泌尿器感染(尿pH↑と結石)
- 嫌気性菌(βラクタマーゼ阻害剤と併用):バクテロイデス
- グラム陽性桿菌:リステリア
緑膿菌に有効な広域ペニシリン
- 例:ピペラシリン<PIPC>、メズロシリン<MZPC>
- 適応:耐性リスクが高いグラム陰性菌による感染、好気性菌と嫌気性菌の腹腔重複感染
- グラム陽性菌に感受性が弱い
セフェム系
セファロスポリン
無効:腸球菌(天然の耐性)と嫌気性菌(基本的不可)
第一世代
- 例:セファゾリン<CEZ>、セファラジン<CED>、セファレキシン<CEX>、セファドロキシル<CDX>
- 有効:MSSAと連鎖球菌(第三世代より強い)
- 無効:グラム陰性菌(βラクタマーゼに不安定ため)
- MSSAによる血流感染と感染性心内膜炎はセファゾリンを選ぶ
- 原型として尿中排泄されるため、グラム陽性菌による尿路感染に適応
- 周術期予防
第二世代
- 例:セフプロキシル<CFPZ>、セファクロル<CCL>、セフロキシム<CXM>
- 有効:肺炎連鎖球菌(第一世代より強い)、MSSA(第一世代より弱い)、ヘモフィルスとモラクセラなど一部のグラム陰性菌
- 無効:サルモネラ、赤痢菌、腸内細菌科
第三世代
- 例:セフトリアキソン<CTRX>、セフォペラゾン<CPZ>、セフタジジム<CAZ>、セフジニル<CFDN>、セフィキシム<CFIX>
- グラム陽性菌にやや弱いが、腸内細菌科にもっと強く、サルモネラと赤痢菌にも有効
- CPZとCAZは緑膿菌に有効
- CPZは胆汁排泄されるため胆道感染に適応
第四世代
- 例:セフェピム<CFPM>、セフピロム<CPR>
- 第三世代の抗菌スペクトルとほぼ同じ、ブドウ球菌とエンテロバクター・クロアカに有効
- AmpC型βラクタマーゼに安定
第五世代
- ほぼ第三世代のスペクトラムと同じで、MRSAにも有効
セファマイシン
- 例:セフォキシチン<CFX>、セフメタゾール<CMZ>、セフミノクス<CMNX>
- 第二世代セファスポリンの抗菌スペクトルとほぼ同じ、嫌気性菌にも有効(バクテロイデスの耐性は増えるが)
- ESBLに安定
- 耐性グラム陰性菌に適応、嫌気性菌が含まれる周術期予防
オキサセフェム
- 例:ラタモキセフ<LMOX>
アズトレオナム<AZT>
- グラム陰性菌だけ有効、緑膿菌に有効
- メタロ-β-ラクタマーゼに安定
- ほかのβラクタムと交差アレルギーなし
カルバペネム
- 例:イミペネム・シラスタチン<IPM/CS>、メロペネム<MEPM>
- 有効
- グラム陽性球菌:ブドウ球菌、連鎖球菌、腸球菌に有効であるがほかのβラクタムより優れない
- グラム陰性菌:腸内細菌科に強く、緑膿菌やアシネトバクターなどブドウ糖非発酵菌に有効~~(エルタペネムを除く)~~
- 嫌気性菌(バクテロイデスなど)
- 無効:Stenotrophomonas maltophilia(天然の耐性)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌<MRSA>、カルバペネム耐性腸内細菌<CRE>、バンコマイシン耐性腸球菌<VRE>
- ESBLに安定
- 適応:耐性菌による感染(院内肺炎、複雑性尿路感染症)、嫌気性菌が含まれる重複感染、無顆粒球症の発熱
- IPM/CSはノカルディアと非定型抗酸菌(マイコバクテリウム・アブセサス)に強い
- IPM/CSの重大な副作用は中枢神経症状
- MEPMはBurkholderia cepaciaなどブドウ糖非発酵菌に強い
マクロライド系
- 例:エリスロマイシン<EM>、アジスロマイシン<AZM>、クラリスロマイシン<CAM>
- 適応:非定型肺炎、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪を予防(ヘモフィルス、モラクセラ)、結膜炎(クラジミア)、性器感染(クラジミア、一部の淋菌、ヘモフィルス)、非定型抗酸菌、ジフテリア、百日咳、カンピロバクター、回帰熱
- 無効:グラム陽性菌、腸内細菌科に作用は弱く,EMはヘモフィルス、モラクセラに無効
- CAM:ピロリ菌、一部の非定型抗酸菌
- EMはCYP3A4を抑えるため、AZMのほうが優れる
- マクロライド耐性が増えてくるため、成人はキノロン系へ検討する
アミノ配糖体
- 例:アミカシン<AMK>、ゲンタマイシン<GM>、ストレプトマイシン<SM>
- βラクタムと併用して、重症または耐性グラム陰性菌感染の治療
- 有効:緑膿菌、抗酸菌、ノカルディア、ブルセラ
- 腸内細菌科、緑膿菌、アシネトバクター:AMK
- 結核:SM
- 無効:嫌気性菌
キノロン系
- 例:シプロフロキサシン<CPFX>、レボフロキサシン<LVFX>、モキシフロキサシン<MFLX>
- 有効:
- 肺炎球菌などグラム陽性球菌
- ヘモフィルス、モラクセラ、腸内細菌科などグラム陰性桿菌
- ブドウ糖非発酵菌に大抵有効
- MFLX:肺炎球菌に強く、嫌気性菌に有効(他のキノロンは嫌気性菌に無効)、緑膿菌に弱い
- CPFX:緑膿菌が含めグラム陰性菌にやや強く、肺炎球菌に弱い
- 適応:呼吸器感染、尿路感染(キノロン耐性大腸菌が増えるので再検討が必要)、結核の第二治療薬
- 禁忌:(軟骨発達障害のため)十八歳以下、妊娠、哺乳,(不整脈になりうる)QT延長、低カリウム血症
- 注目な副作用:血糖の高値、中枢神経症状(とくにNSAIDsと併用)、日光過敏、軟骨発達障害、QT延長、不整脈
テトラサイクリン
- 例:ドキシサイクリン<DOXY>、ミノサイクリン<MINO>
- 有効:
- 非定型菌
- グラム陽性菌:黄色ブドウ球菌(市中感染型MRSA)、Propionibacterium acnes(ざ瘡)
- グラム陰性菌:ヘモフィルス、モラクセラ、腸内細菌科の一部、ブドウ糖非発酵菌
- 無効:連鎖球菌
- 適応:
- クラジミア、リケッチア、ブルセラ、コレラむ、ペストの第一治療薬
- ペニシリンアレルギー場合、スピロヘータ、破傷風、梅毒などの治療
チゲサイクリン<TGC>
- 有効:ブドウ球菌、連鎖球菌、腸球菌(MRSA、ペニシリン耐性肺炎球菌<PRSP>)、ヘモフィルス、モラクセラ、一部の腸内細菌科、一部のブドウ糖非発酵菌、バクテロイデス、非定型菌
- 無効:プロテウス、緑膿菌、プロビデンシア
- アシネトバクター感染の治療に、他の抗生物質が効かない場合、TGCは使える
ポリペプチド系
- 例:ポリミキシンB<PL-B>、ポリミキシンB/コリスチン<CL>、バシトラシン<BC>
- 有効:耐性腸内細菌科、緑膿菌、アシネトバクター
- 無効:グラム陽性菌、一部のグラム陰性菌(プロテウス、プロビデンシア、セラチア、Burkholderia)、嫌気性菌
- 副作用:腎機能障害、神経系障害
- 多剤耐性グラム陰性桿菌の最終手段!
サルファ剤
- 例:ST合剤
- 適応:Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、ノカルディア、ニューモシスチス肺炎、トキゾプラズマの第一治療薬
- 無効:腸球菌、連鎖球菌、腸内細菌科
ホスホマイシン
- 有効:MRSA、連鎖球菌、腸球菌、腸内細菌科(ESBL)、緑膿菌
- 適応:尿路感染症
グリコペプチド系
- 例:バンコマイシン<VCM>、テイコプラニン<TEIC>
- 適応:耐性グラム陽性菌による重症感染症とMRSA感染症
- 感染性心内膜炎(MRSA)
- 髄膜炎(PRSP)
- 骨髄炎(MRSA)
- 敗血症(MRSA)
- 作用が遅いので、MSSAと腸球菌による感染症はβラクタム系が優れる
- 体重と腎臓機能に基づいて投与量を決めるため、濃度モニターが必要となる
リネゾリド<LZD>
- 有効:VCMとほぼ同じ、VCM耐性腸球菌、ノカルディア、結核,MRSA肺炎(肺の組織に高濃度)
- 肝代謝のため腎臓機能不全に安全
- 副作用:投与10日後、可逆性の骨髄抑制とくに血小板減少
ダプトマイシン<DAP>
- 適応:MRSA、腸球菌による血流感染症
- 組織に低濃度のため、肺炎などに無効
- 副作用:クレアチンキナーゼ高値、PT延長
クリンダマイシン<CLDM>
- 有効:黄色ブドウ球菌(MSSA、市中感染型MRSA<CA-MRSA>)、嫌気性菌
- 無効:腸球菌、連鎖球菌
- 適応
- MSSA、CA-MRSAによる皮膚(ざ瘡など)、軟部組織感染症
- 骨髄炎
- セフェム系アレルギー患者の周術期
- ST合剤アレルギー患者のニューモシスチス肺炎(プリマキンと併用)
- 再発しやすいため、黄色ブドウ球菌による血流感染症に使わない
ja/med/abx.txt · 最終更新: 2022/05/26 03:24 by 127.0.0.1